2025年4月に消費者庁が「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」を公開し、消費者保護の観点で法規制の必要性があると指摘したことから、日本でもダークパターン問題が大きな関心事になりました。いままで普通に運用されてきたショッピングサイトが違法になるかもしれないのです。本記事ではダークパターンについて解説します。
ダークパターンとは
ダークパターンとは「Webサイトやアプリにおいて、利用者の意図に反して特定の行動をとらせることを目的として設計されたユーザーインターフェース上のトリック」(発案者H.rignull氏による定義)を指します。
具体的になにがダークパターンに該当するのかについて、消費者庁はダークパターンの典型的な例を紹介する資料を前述報告書と合わせて公開しています。紹介された事例の全てが規制されると決まったわけではありませんが、ショッピングサイト運営者は事例と同じことをやってしまっていないか確認した方が良いでしょう。
海外の動向
欧米ではすでにダークパターンは違法化されています。米国では連邦取引委員会法(FTC法)で、欧州ではデジタルサービス法(DSA)で、それぞれダークパターンの使用を禁止しています。
ダークパターンの典型例
以下にダークパターンの典型的な例を消費者庁資料より引用します。詳細は消費者庁資料を確認してください。
典型例
- 強制登録
会員登録(アカウントの作成を含む)を強制されるか、登録が必要だと思い込まされてしまうもの - 強制的情報開示
だまされて又は強制されて、商品の購入やサービスを利用する上で必要と考えられる範囲を超えて、個人情報を共有してしまうもの - 隠された情報
重要な情報が不明瞭にされているもの - 事前選択
事業者の望む選択肢がデフォルトで事前選択されているもの - 不当参照価格
誤解を招く又は虚偽の参照価格からの割引価格という形で価格が表示されているもの - ひっかけ質問
質問が二重否定であるなど、消費者が誤解しやすい表現になっているもの - 感情のゆさぶり
消費者に特定の選択肢を選ばせるため、感情を利用して人を操る言い回しになっているもの - 執拗な繰り返し
事業者が望むことを消費者に行うよう繰り返し求めるもの - キャンセル困難
商品等の購入や会員登録等、事業者への申込みの手続の難易度と、解約・退会の難易度が釣り合わないもの - 価格比較妨害
価格等を比較しづらくしているもの - 隠れたコスト
費用が複数の形式で表示されるなど不明瞭になっている、又は契約締結プロセスの終盤で明らかにされるもの - お客様の声(1)
商品等を購入した他の消費者の評価や口コミに関する表示であって、誤解を招くものや虚偽の可能性があるもの - お客様の声(2)
商品等を購入した他の消費者の評価や口コミに関する表示であって、誤解を招くものや虚偽の可能性があるもの - No.1表示/高満足度
商品等の売上や性能に関するランキング1位の表示や、高い満足度の表示があるもの - カウントダウンタイマー/期間限定
商品・サービスや割引の提供期限のカウントダウンや、間もなく終了する旨の表示であって、消費者を急かすものや虚偽の可能性があるもの
ダークパターンの難しいところは「まだ善悪の明確な線引きがない」という点です。世間に許容されるパターンとされないパターンがあり得るのです。消費者と事業者の対話を通じた社会的合意が必要であるといえます。
いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査|消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_010
参考資料(ダークパターン事例イラスト集)[PDF:4.6MB]|消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_010/assets/caa_futurer101_0407_03.pdf
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