ランディングページの中のカスタマージャーニー

ユーザーの日常生活だけがカスタマージャーニーではない

カスタマージャーニーマップは、UXデザインにおけるもっとも有名な手法で、ユーザーの得ている典型的な体験を可視化するための手法です。ユーザーの典型的な体験を状況・心理・行動に分解して時系列順に整理し、さらに、製品・サービス・宣伝・店舗・その他企業からユーザーへの働きかけの全てを「タッチポイント」として追記します。オムニチャネルが当たり前化した現代のWebサービスにおいては、自分達のサービスの全体像を俯瞰するための最重要の手法になっています。

ですがユーザーの典型的な体験とは日常生活だけではありません。あるひとつのユーザータスク(ユーザーが目的達成のために行うひとまとまりの手順)だけに着目した場合であっても、やはりユーザーは体験を得ており、カスタマージャーニーマップとして描くことができます。

ランディングページ体験とCTA

ランディングページと呼ばれる宣伝広告用ウェブサイトは、長大な1枚のページに、コンテンツとしての文章や写真と、CTAボタン(Call to Action, 商品購入や会員登録などの企業として顧客に行って欲しい行動の総称)が配置される構成が一般的です。

いくつかのランディングページを続けて読むと、ランディングページのコンテンツには決まったパターンがあることがわかります。このパターンは、実はマーケティング業界で用いられるAIDA理論に基づいて作られています。

▼1.Attention(注意を引く)
 ▽オンライン広告を出稿して注意を引き、ランディングページに呼び寄せる 

▼2.Interest(興味を持たせる)
 ▽ファーストビュー(扉絵とキャッチコピー)
 ▽問いかけ(困りごとや願望を思い出させる)
 ▽価値提案(困りごとや願望の解決した幸福な状態の提示)  

▼3.Desire(ぜひ欲しいと思わせる)
 ▽商品説明(特徴、他社優位、仕組み、等)
 ▽信頼獲得(実績、表彰、等)
 ▽不安解消(お客様の声、金額提示、返金保証、等)
 ▽クロージング(背中押しトーク) 

▼4.Action(買わせる)
 ▽CTA(Call to Action)ボタン

AIDA理論の重要なポイントは、消費者の心理と行動は企業からの働きかけによって徐々に変化していくということです。AIDA理論に基づいてデザインされたランディングページもまた、読み進むことによって読者の心理と行動が徐々に変化していきます。すなわち体験がそこに存在しカスタマージャーニーマップとして描くことができるのです。

CTAボタンを最後に置く理由は、それがランディングページを読むというユーザータスクのカスタマージャーニーにおける最良のタイミングだからです。ページ冒頭にCTAボタンを置くランディングページもありますが、それはリピート購入者への配慮であり、初見者のためにはページ最後にCTAボタンを置くのが最良です。

応用:ソーシャルゲーム体験とCTA

ユーザータスクもカスタマージャーニーマップとして描ける、という考え方はソーシャルゲームのCTA(ソーシャルゲームの場合は課金を促す表示)に応用されています。

ソーシャルゲーム内に表示されるCTAは、ゲームのプレイヤーが「課金してでも直面するユーザータスクを達成したい」ともっとも強く願うタイミングで表示されます。「巧妙なゲーム内広告によってレアアイテムの希少性を煽られた直後」「ゲームにおいて大敗北を喫した直後」などです。

CTAを表示するベストのタイミングを見極めるためには、ユーザータスクをカスタマージャーニーマップとして表現し直すことが必要です。このマップは経営者や株主に見せられる綺麗なマップとして描かれることはなく、UIデザイナーが画面フロー図を描く際にユーザーの感情の起伏を追記することで(または脳内でイメージすることで)表現されます。


「ユーザータスクをカスタマージャーニーマップとして描く(イメージする)」スキルには汎用性があります。UIデザイナーのみなさんは、ぜひこのスキルを習得し、ユーザータスク各手順ごとの細部の使いやすさだけに捉われない、ワンランク上のUIデザイナーを目指してください。(森山)

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